MOTO BURNINGRIDE LIKE THE WORLD ENDS TONIGHT.
← BACK TO ALL STORIES

革ジャンの本気選び——Schott、Lewis Leathers、Vanson、Real McCoy'sを並べて考える

バイク乗りが一生付き合える革ジャンを、4大ブランドの設計思想・革質・構造の違いから腰を据えて比較する。

革ジャンの本気選び——Schott、Lewis Leathers、Vanson、Real McCoy'sを並べて考える
Photo by Mehmet Talha Onuk · Source

革ジャンは「どれでもいい」わけがない

バイク用品としての革ジャンと、ファッションアイテムとしての革ジャンは、同じ売り場に並んでいても求められる性能がまるで違う。ステアハイドの厚みひとつとっても、タウンユースなら0.8mm前後の柔らかい革が好まれるが、路面に叩きつけられる可能性のあるライダーにとっては1.0〜1.3mm、場合によってはそれ以上の厚革でなければ意味がない。縫製のピッチ、ファスナーの材質、裏地の有無、袖丈の設計——ライディングポジションで前傾した際にどこが突っ張り、どこに余裕が出るかまで考えて作られたものと、ハンガーに掛けたシルエットだけを優先したものとでは、同じ「ダブルライダース」でもまったく別の製品になる。

ここでは、バイク乗りが本気で一着を選ぶときに必ず名前が挙がる4つのブランド——Schott(ショット)、Lewis Leathers(ルイスレザーズ)、Vanson(バンソン)、The Real McCoy's(ザ・リアルマッコイズ)を並べて、それぞれの設計思想と革質、そして「何のために作られたジャケットなのか」を整理する。正解はひとつではない。だが、少なくとも「なぜこの一着なのか」を言語化できる程度には、選ぶ前に知っておくべきことがある。

leather motorcycle jacket vintage collection Photo by Agence Rol (Public domain) via Wikimedia Commons

Schott——アメリカン・ライダースの原型を作った量産革ジャン

ニューヨークで1913年に創業したSchottは、1928年に世界初のジッパー付きライダースジャケットとされる「Perfecto」を発売した。マーロン・ブランドが『乱暴者(ザ・ワイルド・ワン)』(1953年)で着用したことであまりにも有名だが、Perfectoの本質はハリウッドの衣装ではなく、ニューヨーク近郊のモーターサイクリストのための実用衣料だった。

現行ラインナップの中核である613UST One Starは、その直系にあたるダブルライダースだ。素材はステアハイド(成牛革)で、公称の革厚は概ね1.0〜1.2mm程度とされる。タンニン鞣しではなくクロム鞣しが基本で、新品時からある程度のしなやかさがある一方、馴染むまでの硬さは相応にある。エポレット(肩章)、スナップ式のウエストベルト、左胸のコインポケットといったディテールは、1950年代からほぼ変わっていない。つまり、半世紀以上にわたってパターンの骨格を維持してきた「生きた工業製品」である。

ライディングにおけるSchottの美点は、アメリカンクルーザーとの相性のよさだ。着丈がやや長めで、腕を前方に伸ばすプルバックハンドル系のポジションでも背中が出にくい。逆に、セパレートハンドルで深く前傾するポジションでは肩回りの突っ張りを感じやすいとも言われる。サイズ感はアメリカンブランドらしくやや大きめで、日本人の体型ではワンサイズ下を選ぶのが定石とされてきた。

価格帯は、アメリカ本国での定価が600〜800ドル前後(日本円で9万〜12万円程度)、日本の正規代理店価格はやや上乗せされるが、後述するルイスレザーズやリアルマッコイズと比べれば圧倒的に手が届きやすい。革ジャン入門として、あるいは「消耗を気にせずガンガン着る一着」として、Schottは今でもバイク乗りの最初の選択肢に入る。

Schott Perfecto leather jacket motorcycle Photo by Sand (Public domain) via Wikimedia Commons

Lewis Leathers——英国モーターサイクル文化が育てた構造美

Schottがアメリカンクルーザーの文脈で語られるなら、Lewis Leathersはブリティッシュ・カフェレーサーの文脈に根ざしている。1892年にロンドンで創業したD. Lewis Ltd.が母体で、戦後のロッカーズ文化——トライアンフやノートンで公道を飛ばし、エースカフェに集った若者たちの「制服」となったのが、ルイスのライダースだった。

現行モデルの中で最もアイコニックなのがNo.391 Lightning(ライトニング)である。ダブルブレストのフロント、斜めに走るジッパー、タイトなウエスト。一見するとSchottのPerfectoと似た構造に見えるが、パターンの設計思想がまったく異なる。ライトニングは、カフェレーサーの前傾姿勢を前提に袖がやや前方に振られている。背中のパネルも前傾時にフィットするよう、立体裁断に近い設計がなされているとされる。アメリカンダブルとの最大の違いは、この「ライディングポジションへの最適化」にある。

革質の選択肢が広いのもルイスの特徴だ。標準仕様のカウハイド(ドメスティックカウ)に加え、ホースハイド(馬革)やシープスキン(羊革)をオプションで選べる。ホースハイドは繊維が緻密で、同じ厚みでもカウハイドより耐摩耗性が高いとされる一方、経年変化で独特の光沢と皺が出る。ここに「育てる楽しみ」を見出すライダーが多い。

価格は日本国内の正規取扱店で概ね15万〜25万円前後(仕様・革種による)。Schottの倍近い価格帯だが、英国内のファクトリーでのハンドメイドであること、革種のカスタムオーダーに対応すること、そして何より半世紀以上にわたって基本パターンを維持しながら現役であることを考えれば、この価格設定には相応の根拠がある。

Lewis Leathers Lightning jacket cafe racer Photo by Gijs Coolen on Unsplash

📺 関連映像: Lewis Leathers factory London leather jacket — YouTube で検索

Vanson——レーシングスーツの血統を持つ実戦の革ジャン

マサチューセッツ州に拠点を置くVanson Leathers(バンソン)は、SchottやLewis Leathersとは出自が異なる。1974年の創業当初からモーターサイクル・レーシングスーツを主力としており、AMAスーパーバイクやダートトラックのライダーにスーツを供給してきた。つまり、ストリートウェアやファッション側からバイクに寄ってきたのではなく、レースの現場から生まれたブランドである。

現行のストリート向けラインナップで代表的なのがENFIELD(エンフィールド)やModel B(モデルB)だが、バンソンの本領が出るのは革の選択と縫製の処理だ。同社はCompetition Weight(コンペティションウェイト)と呼ばれる厚手の革を標準で用いることが多く、公称で1.2〜1.4mm前後のステアハイドが使われるとされる。この厚みは、転倒時のスライド耐性を意識した設定である。一般にライダースジャケットの革は厚ければ厚いほど安全だが、重量と着心地のトレードオフが生じる。バンソンはそのバランスを、レーシングスーツで培ったパターン設計——肘や肩のアーティキュレーション(関節部の立体裁断)で吸収しようとしている。

技術的に注目すべきは、バンソンのジャケットに見られる「腕のプリカーブ」だ。これは袖を最初からやや曲がった状態で裁断する手法で、ライディング時にハンドルを握った腕のポジションに合わせてある。腕を下ろした状態では袖にゆとりが余るように見えるが、ライディングポジションを取ると自然にフィットする。レーシングスーツでは当然の設計だが、ストリート向けジャケットにここまで徹底しているブランドは多くない。

価格帯はアメリカ本国で700〜1200ドル前後(モデルとオプションによる)。日本国内では並行輸入品が中心で、実売10万〜18万円程度が目安とされる。レーシングスーツの血統を持つストリートジャケットという立ち位置は、スポーツバイクに乗るライダーにとって最も理にかなった選択肢のひとつだ。

Vanson leather motorcycle jacket racing Photo by Motoculturel on Unsplash

The Real McCoy's——復刻を超えた「当時の製法への執着」

The Real McCoy's(ザ・リアルマッコイズ)は、日本発のブランドとして異彩を放つ。1990年代にヴィンテージミリタリーウェアの精密な復刻で名を上げ、レザージャケットにおいてはBuco(ビューコ)ブランドのライセンス生産で知られる。Bucoは1930年代にミシガン州デトロイトで創業した、ヘルメットとライダースジャケットの老舗だ。オリジナルのBucoジャケットは1960年代末に生産が途絶えたが、リアルマッコイズがその型紙と素材を可能な限り再現し、日本国内の工場で生産している。

代表モデルであるBuco J-100は、1950年代のオリジナルJ-100を忠実に復刻したダブルライダースだ。注目すべきは革の鞣し方へのこだわりである。リアルマッコイズは茶芯のホースハイドを採用する場合がある。茶芯とは、革の表面を黒く染めているが芯(内部)は茶色い状態を指す。経年使用で表面が擦れると下地の茶色が顔を出し、独特のエイジングが生まれる。これは当時の染色技術の限界から生じた特性だが、現代のクロム鞣し・顔料仕上げでは再現が難しく、あえてこの工程を踏むことに手間とコストがかかる。

縫製に使われる糸、ジッパーの形状(Talon型の復刻ジッパーを用いるモデルもある)、スナップボタンの刻印——そうした細部への執着は、もはや「ジャケットを作っている」というより「1950年代のアメリカの工業製品をタイムカプセルから取り出す作業」に近い。だが、それが単なるコスプレに終わらないのは、革の質と縫製の精度が現代の水準で担保されているからだ。ヴィンテージの復刻品でありながら、実際にバイクに乗るための強度を持っている。

価格は20万〜30万円台が中心で、ホースハイドの限定モデルではさらに上がる。4ブランドの中では最も高価な部類に入るが、対象とする顧客は「Schottを着て、ルイスを着て、その先にあるもの」を求める層だ。ここまで来ると、革ジャンは実用品であると同時に工芸品の領域に片足を踏み入れる。

Buco J-100 horsehide leather jacket vintage Photo: Gibson J-100 & other guitars by froderamone, via Wikimedia Commons (CC BY 2.0)

📺 関連映像: Real McCoy's Buco leather jacket horsehide エイジング — YouTube で検索

4ブランドを並べて見えてくる「設計思想の違い」

Schottは量産性と普遍的なアメリカンスタイルの両立。Lewis Leathersはブリティッシュ・カフェレーサー文化に根差したライディング最適化。Vansonはレーシングスーツの技術をストリートに翻訳した実戦志向。Real McCoy'sはヴィンテージの製法と素材を現代の精度で再構築する復刻芸。4つのブランドは、いずれも「バイクに乗るための革ジャン」を作っているが、その出発点が異なる。

選び方の基準は、まず自分のバイクとライディングポジションから逆算するのが合理的だ。アメリカンクルーザーやチョッパーならSchottの着丈とシルエットが自然にはまる。ブリティッシュ系やカフェレーサーカスタムに乗るなら、ルイスの前傾対応パターンが活きる。スポーツバイクやストリートファイターなら、バンソンのプリカーブドスリーブが理にかなう。そして、旧車に乗りながら「当時のライダーが着ていたもの」を追体験したいなら、リアルマッコイズのBucoが応える。

革質については、一般論として、クロム鞣しは柔軟性と耐水性に優れるがエイジングは穏やか。タンニン鞣し(やそれに近い工程)は硬いが使い込むほど表情が変わる。ホースハイドは繊維密度が高く、同厚のカウハイドより摩耗に強いとされるが価格も跳ね上がる。こうした素材特性を理解した上で、自分の乗り方——毎日の通勤なのか、週末のツーリングなのか、年に数回のイベント走行なのか——に照らして選ぶのが、結局は一番長く付き合える一着への近道になる。

中古市場にも触れておく。Schottは流通量が多く、状態のよい中古が2万〜5万円台で見つかることも珍しくない。ルイスは中古でも定価の7〜8割前後で取引されることが多く、希少モデルはプレミアがつく。バンソンは日本国内の流通がやや少ないが、個人売買では状態次第で5万〜10万円台。リアルマッコイズのBucoは中古でも値崩れしにくく、限定ホースハイドモデルは定価以上で取引される場合がある。

motorcycle rider leather jacket riding Photo by GollyGforce - Living My Worst Nightmare (BY) via Openverse

まとめ——革ジャンは「買った日」ではなく「10年後」で評価する

革ジャンの本当の価値は、購入時のスペックシートだけでは測れない。3年着て体に馴染んだSchott、5年で肘が茶芯の出始めたBuco、10年を超えて全身が自分の形になったルイス——それぞれが、乗り手の身体とバイクの記憶を蓄積する装備だ。だからこそ、最初の一着を選ぶときに「なぜこのブランドなのか」を自分の言葉で説明できることが大切になる。流行に左右される買い物ではない。自分のバイク、自分の体、自分の乗り方に正直に選ぶ。それだけのことだが、それが意外に難しい。

さらに深く知りたい向きには、以下の資料が参考になる。エイ出版社の『Lightning Archives レザージャケット』は、各ブランドのヴィンテージモデルを網羅的に写真で記録しており、ディテールの比較に有用だ。造形社の『カスタムバーニング 2019年2月号』はライダーズジャケット特集でカスタムバイクとの合わせ方を掘り下げている。また、英国のメンズウェア誌『Men's File Issue 22』(Nick Clements Publishing)は、Lewis Leathersのファクトリーレポートを含む充実した内容で、英国ライダーズ文化の理解を深めるのに好適な一冊である。


本記事はメーカー公開資料・雑誌バックナンバー・公開報道を編集したものです。公道での違法改造・スピード超過・無保険走行を推奨するものではありません。車両の購入・カスタム・メンテナンスは、必ず正規ディーラーまたは認証整備工場にご相談ください。

SHARE

📚 この記事で紹介した書籍

PR / アフィリエイトリンク

※ 当サイトは楽天アフィリエイトおよび Amazon アソシエイト・プログラムの参加者であり、適格な購入を通じて報酬を得ています。価格・在庫はリンク先で最新の情報をご確認ください。

🛠 この記事で紹介した装備・パーツ

PR / アフィリエイトリンク

※ 当サイトは楽天アフィリエイトおよび Amazon アソシエイト・プログラムの参加者であり、適格な購入を通じて報酬を得ています。価格・在庫はリンク先で最新の情報をご確認ください。

Keep ReadingRELATED