ヘドンの新型エピキュリスト──塗装の「肌」に7万円を払う覚悟があるか
英国ヘドンの新型ジェットヘルメット「エピキュリスト」を現場視点で解剖。価格の内訳、国産との差、選ぶべき人を語る。

「塗装の密度」で語られるブランド
英国のプレミアムヘルメットブランド HEDON(ヘドン)を語るとき、評価の軸として真っ先に挙げられるのは、帽体強度でも内装フィットでもなく「塗装の密度」だ。下地・中間層のパール・仕上げのクリアという多層構成が光の角度で表情を変える ── 量販ヘルメットのソリッド塗装では出にくいこの奥行きが、ヘドンが繰り返し評される特徴である。
出典である Webike プラスの記事によれば、そのヘドンから新型オープンフェイスモデル「EPICURIST(エピキュリスト)」が発表され、日本での予約販売が始まっている。正規輸入元のモトリモーダが取り扱い、2026年7月下旬入荷予定。2026年のニューカラーを含む複数バリエーションが揃い、価格帯は税込6万円台後半から7万円台とされる。国産プレミアムジェットが3万円台半ばで買える時代に、この数字をどう受け止めるか。そこが今回の話の軸になる(本記事は実機レビューではなく、出典記事と一般的な製品知識に基づく紹介である)。
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ヘドンというブランドの成り立ち
ヘドンはロンドン拠点で2013年頃に本格始動した、ヘルメットメーカーとしてはまだ若いブランドだ。共同創業者はリンゼイ・チョンとレジナルド・フリント夫妻で、ともにデザイン/ヘルメット製造畑の出身。その経歴がそのまま製品の佇まいに刻まれている。フルフェイスの「HEROINE」シリーズ、クラシックジェットの「HEDONIST」シリーズなど、ラインナップの軸足は一貫してクラシック&ネオクラシック系車両に合わせたデザインに置かれてきた。
製品を語るとき避けて通れないのが、グラスファイバーコンポジットの帽体と手仕上げの塗装工程である。量産メーカーが射出成形のABS樹脂で一気に抜くのとは違い、FRP系素材を複数レイヤーで積層し、表面処理に時間をかける。仕上がりの「肌」に手間を食わせるという哲学は、自動車の世界で言えばモーガンやTVRの外装仕上げに近い。これは同時に、生産数の天井を低くする要因でもある。新色が出るたびに早期完売するモデルも珍しくなく、予約販売という形式が常態化しているのはそのためだ。
安全規格はECE認証をクリアしており、日本のPSCマーク・SGマーク相当の安全性を担保した上で国内流通している。なお、ヘドンの製品には現行のECE 22.06認証モデルと従来のECE 22.05認証モデルが混在しているため、購入時にはスペックシートの確認を推奨する。「プレミアムだから安全」ではなく「規格をクリアした上でプレミアムである」という順序を崩していない点は、正当に評価すべきだろう。ここを曖昧にするブランドも少なくない中で、ヘドンはその線引きを守っている。
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エピキュリストの実像──変わったところ、変わっていないところ
エピキュリストは既存の「HEDONIST(ヘドニスト)」の進化形と位置づけられるオープンフェイス(ジェット)ヘルメットだ。基本的な帽体形状はヘドニストのクラシカルなシルエットを踏襲しつつ、いくつかの実用的な改良が加えられている。
まず目を引くのがバイザー周りの設計変更である。従来のヘドニストではスナップボタン式のバイザーが標準だったが、エピキュリストではバイザーの着脱機構と固定方法が見直された。風切り音の低減と、被ったときの重心バランスに直接影響する部分であり、クラシックジェットにありがちな「見た目は良いが高速巡航で首が疲れる」問題への回答の一つと見てよい。
内装はフルリムーバブルで洗濯が可能とされる。チークパッドの形状は明確にアジアンフィットを謳うものではなく、欧州ブランドのヘルメットに一般的な傾向として、帽体がやや細身(こめかみ周りのホールドが強く、頭の形によって相性が分かれる)になりやすい。頬骨が張っている人ほど店頭でのフィッティングが重要になる。欧州型ヘルメット全般で「普段のサイズより上げてちょうど良かった」というのは珍しくない話で、ヘドンも例外ではないと考えておくのが無難だ。
2026年のニューカラーは複数用意されており、ヘドンらしいアースカラーや深いメタリック系が揃う。冒頭で書いた「光の角度で変わる奥行き」は、クリア層の厚みと下地処理の丁寧さが生む効果だ。この特性はエピキュリストの新色にも受け継がれているはずである。現代の量産塗装では再現コストが合わない類のものであり、ここにヘドンの手仕事としての核がある。
📺 関連映像: HEDON EPICURIST helmet review 2026 — YouTube で検索
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6万円台のジェットヘルメットは「高い」のか
価格の話をする。エピキュリストの日本での予約価格はカラーによって異なるが、税込で概ね6万円台後半から7万円台にかけて設定されている。SHOEIのJ-Cruise IIIが4万円台後半、AraiのVZ-RAMが同じく4万円台後半から5万円台前半であることを考えると、国産プレミアムジェットの約1.4倍から1.5倍に相当する計算だ。
ただし、この比較はやや乱暴である。SHOEIやAraiのジェットヘルメットは内蔵サンバイザーやベンチレーション機構など「機能」で勝負するプロダクトであり、ヘドンのエピキュリストとは設計思想の軸そのものが違う。ヘドンが提供しているのは、安全基準を満たした上での「手仕上げの工芸品的プロダクト」だ。比較するならBell Bullittのカスタムペイントモデルや、イタリアAGV X70のヘリテージラインが適切だろう。Bell Bullittのカスタム系が5万円台、AGV X70が3万円台後半。ヘドンの価格設定はプレミアムヘリテージ市場の中でも上限に近い位置にある。
では、その差額はどこに消えているのか。一つは前述の帽体と塗装にかかる人手。もう一つは生産ロットの小ささから来るスケールメリットの不在だ。そして見落としがちなのが、英国からの輸入にかかる物流コストと関税、さらにモトリモーダというインポーターが国内でのアフターサービス──内装交換パーツの在庫維持など──を回すためのマージンである。プレミアムヘルメットの価格には「買った後のケア」の費用が織り込まれている。そこを理解せずに「割高だ」と断じるのはフェアではない。
とはいえ、ヘルメットは消耗品だ。どれほど美しい塗装でも、一般に3年から5年で買い替えが推奨される保安部品である。7万円を3年で割れば月あたり約2,000円弱。ガレージに飾るのではなく実際に被って走るなら、この償却感覚を受け入れられるかどうかが判断の分水嶺になる。
プレミアムヘルメットは「車両とのコーディネート」で選ばれる側面と、「被ったときの気分」に対価を払う側面の両方を持つ ── 用品店の現場でしばしば語られるこの二面性の文脈に、エピキュリストもまた位置づけられる。
Photo by Jagjeet Dhuna on Unsplash
誰がこのヘルメットを選ぶべきか──車両との相性と現実的な使い方
オープンフェイスである以上、用途は限定される。高速道路主体のロングツーリングなら素直にフルフェイスを選ぶべきだし、オフロード成分が入るならアドベンチャー系一択だ。エピキュリストが真価を発揮するのは、ネオクラシック系のネイキッドやカフェレーサー、あるいはクラシックハーレーやトライアンフのボンネビル系で街を流すような使い方だろう。
トライアンフ・ボンネビルT120やロイヤルエンフィールドINT650あたりに跨ったとき、このヘルメットの佇まいは車両の世界観と自然に溶け合う。逆に最新のスーパースポーツや大型アドベンチャーに合わせると、ちぐはぐな印象は否めない。道具には「似合う場所」がある。エピキュリストの似合う場所は、エンジンの鼓動が手のひらに伝わってくるような、そういうバイクの上だ。
国内ではモトリモーダの直営店舗および取り扱いディーラーで試着が可能とされる。ECサイトでの予約も受け付けているが、ヘルメットという性質上、可能な限り実際に頭を入れてから購入を決めてほしい。ヘドンの帽体は前述のとおり欧州型の傾向が強く、サイズ選びで一筋縄ではいかないケースがある。欧州型ヘルメットでワンサイズ上げて合うことは一般的によくある話で、フィッティングの手間を惜しんで通販だけで済ませると後悔につながりやすい。
📺 関連映像: HEDON helmet fitting guide open face — YouTube で検索
Photo: 2017 Bonneville T120 CSNDCC1 by AmenMoto, via Wikimedia Commons (CC BY-SA 4.0)
まとめ
ヘドンのエピキュリストは、安全基準をクリアした上で「手仕事の密度」と「デザインの完成度」にプレミアムを載せたオープンフェイスヘルメットである。2026年ニューカラーの予約販売はすでに開始されており、入荷は同年7月下旬予定。価格帯は税込6万円台後半から7万円台。
この金額を「高い」と感じるか「妥当」と感じるかは、ライダーがヘルメットに何を求めるかで決まる。防御性能と機能性のコストパフォーマンスならSHOEIやAraiが圧倒的に強い。だがヘルメットをバイクライフの「表現」の一部と捉えるなら、ヘドンが提示する世界は国産メーカーとはまったく別の地平にある。
予約は早い者勝ちの側面があり、人気色は入荷前に枠が埋まる可能性がある。気になったなら、まずモトリモーダのサイトか取り扱い店でカラーラインナップを確認し、できれば店頭でフィッティングを試すところから始めるのが堅実だ。
もっと深く知りたい人向けに。ヘルメットの安全規格やヘリテージ系プロダクトのデザイン潮流は、ライディング系雑誌(『RIDERS CLUB』など)のギア特集がたびたび扱っている。号によって内容が異なるため、最新号やバックナンバーで対象を確認のうえ参照したい。確定スペック・価格・入荷情報は、出典である Webike の記事と正規輸入元(モトリモーダ)・メーカー公式で必ず確認してほしい。
本記事は出典記事(Webikeプラス)およびメーカー・輸入元の公開情報を編集したものです。実機レビューではありません。安全規格・価格・入荷時期・カラー展開は変動し、原典と異なる場合があります。購入前に出典記事・正規輸入元・店頭で必ずご確認ください。
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